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ネコメシCEOブログ

ネコメシCEOのブログです。主にツルカメの話題を書きたいと思います(謎)

直感的なUIとは予想した通りの結果が得られるもののこと

UIデザインの参考に!斬新で美しいUIをもったiPhoneアプリまとめ

という記事では、紹介しているアプリのことごとくに、「ボタンが無くてシンプル」「直感的で使いやすい」などと書いてあるが、ClearのUIみたいなのを「誰でも直感的に操作できる」などと評価する理由がさっぱり理解できない。

こういうUIは基本的にどれも玄人向けで、操作がジェスチャの塊になってしまっているものは、それが使いこなせる俺カッケー感が高くて自己顕示欲を満たしやすい。"そのように操作できるUIデザイン"が気持ちいいのではなく、"そのように操作している自分"が気持ちいいの間違いなんじゃないだろうか。

 

ボタンが一切なくてシンプルだと気持ちがいいUIになるだって? そんなわけがあるはずない。現実世界はボタンが一切なくてシンプルなUIで溢れているし、そのおかげで毎日いろんな場面でいらいらさせられている。たかが1個のレバーを上げ下げするというだけの超シンプルな水道栓ひとつとっても、上にやったら水が出るのか下にやったらいいのか傍目に判断できない。やってみないことにはわからない。押すか引くかさえすれば開くドアだって、やってみないことにはわからないものはたくさんある(その挙句、正解は横に引くだったりすることだってある)。本当に、シンプルで気持ちいい、直感的で使いやすいだなんて、思ったことがあるのかい?

 

良いUIデザインっていうのは得てして直感的なUIデザインなんだけど、それはボタンが無いとかジェスチャで操作できるとかっていうことじゃない。

では直感的なUIとは何か。人が遭遇してきたさまざまな物理現象に対する基本的な感覚と、生きて行くうえで体験するさまざまな出来事を通じた経験値の蓄積から結果が予想できて、そして実際に予想通りの挙動をするUIのことだ。もちろんソフトウェアのUIでは、そうしたものをメタファとして用いていて、それがうまく機能していれば習得しやすいし、予想どおりの結果がきちんと得られれば使いやすいということになる。

 

また、良いUIとはユーザビリティの高いUIともいえる。ユーザビリティはISO 9241-11で定義された概念だが、ユーザビリティエンジニアリング原論がいうところのユーザビリティのほうがユーティリティを含んでいない分、UIデザインに特化した指標として扱いやすいように思う(アプリデザインとして担う事項などと切り分けしやすい)。

 

学習しやすさ(Learnability)
システムは、ユーザがそれをすぐ使い始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない
効率性(Efficiency)
一度学習すれば、あとは高い生産性を上げられるよう、効率的に使用できるものでなければならない
記憶しやすさ(Memorability)
ユーザがしばらくつかわなくても、また使うときにすぐ使えるよう覚えやすくしなければならない
エラー(Errors)
エラーの発生率を低くし、エラーが起こっても回復できるようにし、かつ致命的なエラーは起こってはならない
主観的満足度(Satisfaction)
ユーザが個人的に満足できるよう、また好きになるよう、楽しく利用できなければならない

「ユーザビリティエンジニアリング原論」における定義より)

 

ジェスチャ系の操作を強いるのは、主観的満足度においてはポジティブ要因になりうるかもしれないが、どちらかといえば付加価値としての操作になるだろう。ジェスチャ操作をしなくとも効率的に使用できるほうが良い。

だいたいにおいてアプリ個別のUI習熟コストが高すぎるものは、なんというか人生の時間を無駄に消費させるものだと思っている。

 

"実行"と"キャンセル"、この2つのボタンしか無いインターフェースを想像してみよう。"実行"をタップするとそれが「決定」されて実行される。"キャンセル"をタップするとそれが「決定」されてキャンセルされる。これほどシンプルで直感的なインターフェースがほかにあるだろうか。必要最小限の表示要素、これがシンプルの根源だ。

ちなみにこの手の、ボタンのタップは常に「決定」であるというような一貫した操作で本来わかりやすいはずなのに駄目なUIになってしまう場合ももちろん多々あるが、それはたいがいは、「ラベルが悪い(または無い。かつアイコンが悪い)」「選択肢が多すぎる」「コンテクストが理解できない」といったことに起因する。操作感云々ではなく、その操作が"そこ"に有るということ自体が不快なのだ。

 

予想した通りの挙動が実際に行われるということこそがUIに求められるデザインであるし、その結果、高いUXが得られるためには良いコンテンツこそが必要となる。

 

僕はClearをあまり良いものだとは思わないけれども(むしろ覚えゲーだと思っている)、たとえば良いものだとしよう。何であれ良いと考える人は必ずいるのでそれは問題ない。しかしそれは、ClearのUIが良いからというよりも、そもそも日々あなたが抱えるたくさんのタスクそれら自体が、あなたにとって価値のある仕事だったり、魅力のあるコンテンツだからなんだ。そのうえで、ClearのUI表現が主観的満足度を満たしてくれたんだと思う。

だってつまらないタスクばかり並んでいたら、そもそもそのアプリ自体、立ち上げたくさえならないでしょ。

 

予想した通りの挙動っていうのは、文化的な背景であるとか、知識や年齢とかも影響を受けるので、"それ"を誰に届けたいのか?というコンセプトデザインがまず最初に必要だ。それからUXデザインをして、最後にUIデザインをする。デザイン成果物の最表層であるUIだけを取り上げて参考にするよりも、なぜ人は"それ"を満足して使っているのかを考えてみよう。そんなに人は「天気を並べて見たいと思っているのか?」とかね。