ネコメシCEOブログ

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おかんでもわかるわかるUXデザイン Version 0.2 CSS Nite Edition

2014年4月26日開催のCSS Nite LP33の再演版で登壇して参りました。僕はLP33に出てませんので、再演版なのに再演ではないという按配。それと、再演でもないのになんで出てんのっていうと、ネットイヤー坂本くんが急きょ登壇中止となったので代わりに出てくれないかという打診がありまして、準備期間が短いけれども、本ブログでもすでに公開済みの「おかんでもわかるUXデザイン」であればいけるだろうと快諾した次第でありました。

先日公開しました「おかんでもわかるUXデザイン Ver.0.1」は、スライドシェアにて15,000viewsを超える参照数を頂いておりまして、正直、CSS Nite来る人とかもう全員見てんだろう、と思っておりました。なのでただでさえ再演じゃないのに、内容もみんな知ってるみたいな前提を思っていて、本当に心折れそうな按配だったのですが……、アンケート的には「ま、いんじゃねえの?」くらいの評価を頂きましたので、今このようにブログが書ける程度には生き長らえております。

とりあえず、Ver.0.1ともともと銘打っておりますように、これは、バージョンを上げていき、ゆくゆくは本当に「おかん」でもわかるようにしていきたい、という思いがあるのです。なので、まあ、みなさん既に見ているかもしれないけれども、少なからずのバージョンアップをしておかねば申し訳ない、と、まあ、思いまして。とりあえず追加スライド的な感じでVer.0.2とさせて頂きました。これは、ちょっと時間の制約もあったと、言い訳になってしまいますが、単に文字スライドを追加するという形で対応しました。次のバージョンでは、追加部分をどのようにコミPo!化するか?ということに頭を悩ませたいと思っております。

さて、そのVer.0.2のほうはこの記事の最後でEmbedできればと思いますが、今回のアンケート結果をそれをざーっと拝見しまして、いくつか、お答えしておいたほうが良いのだろうなと思ったことについて、こちらで反応しておこうかと、そういう感じです。ちょっと長くなってしまうと思いますが、生暖かく見守って頂ければ幸いです。

 

 

【質問】改善ではなくて完全に新規構築する場合、理想と現実のギャップからの改善点の検討ではなく、何をすればよいのでしょう。

【回答】これは、完全に新規構築するその何かが、まったくもって人類社会の歴史上において本当に真に完膚なきまでに新たな文化ないし生活習慣などを創出しようとしているのか、別にそうでもないのか、に依るところがあると思います。わからないながらに勝手に断じさせて頂きますと、たぶん、別にそうでもないのだと思います。

今回、僕はCJM(カスタマージャーニーマップ)の説明をする際に、製品やサービスなどに出会う前から「旅(ジャーニー)」が始まっていると申し上げました。UXのほとんどの時間は、製品やサービスなどに接して「いない」時間のことだとも申し上げました。これらのことを思い返して欲しいのです。つまり、その完全に新規構築する何かのことなど、知ったこっちゃないヤツ、それが本来のペルソナなんです。そんなペルソナに旅をさせたら、当然のことながら、その完全に新規構築する何かに出会うことなく、Facebookなどで時間をつぶして、仕事をして、帰って飯食って寝る、という旅が記録される、そんなシナリオも余裕でありえるわけです。

さて、それでもいいから、そういうCJMになっちゃうかもしんないけどとにかくCJMを作りましょう。今回申し上げましたとおり、とりあえずやればUXD(ユーザーエクスペリエンスデザイン)なのですから、やればいいんです。

で、やってみるとわかると思うのですが、完全に新規構築する何かの競合が何なのかということが見えてくると思います。もはや現代において、似たようなサービスに勝つとか負けるとか、そういう以前の話として、ユーザの時間を食い合ってるということを認識しましょう。完全に新規構築する何かに時間を使おうかしら?と思う前に、たとえば、とりあえず満員電車に乗ったら頑張って腕を上げてスマホをロック解除して、LINEとかTwitterとかFacebookとか開いてるわけです。はい、そこです。そこで、LINEではなく完全に新規構築する何かを開く、というのが、理想の旅なわけです、たとえばですけど。そのタイミングで完全に新規構築する何かを開かせるにはどうしたらいいんでしょうね? そういうことを、考えましょう。組織全体で、です。デザインチームは下手すりゃUIのことしか考えてませんが、営業部門はそういうことを考えて営業してる可能性がありますよね。つまり、そこで見えたギャップを埋める施策は、すでに組織全体としては取り組んでいるかもしれないのです。むしろ、そこにデザインチームが参加できてない、と、そのように見つめ直せるかもしれないわけです。もちろん、組織全体として何も考えてないかもしれませんが、UXデザインのワークショップを通じて、「あ、俺たちなんも考えてなかったな。はっはっは」という感覚が共有できれば十分に前進したといえるでしょう。

一応、実例的な辺りで付け加えるならば、弊社(ツルカメ)はかつてレーシックのクリニックのWebサイトリニューアルを承ったのですが、その業務において最初のリニューアルコンセプトを構築する際、競合として分析をしたのはH.I.S.でした。旅行会社の。これは何故かといえば、詳細はちと実例すぎて言えないのですけれども、10万使って心機一転するというユーザの心情を鑑みるというケースにおいて、レーシックと近場の海外旅行はどちらも選択肢になりうるという「仮説」に基づいて(この仮説そのものは、「企画」によって生み出されます)、H.I.S.が10万円の旅行をどのようにして扇動しているか(H.I.S.さんすみません)を分析し、こうしたコンテクストの構築によって、人は財布から10万円をスルッと出す、みたいなことを検討したわけです。CJMでいえば、なぜかレーシック屋のCJMではなくH.I.S.のCJMを勝手に作って検討するとか、それくらいの勢いなわけです。

ということで、完全に新規構築する何かが、本当に人類史上まだ誰もが知らないマジで新しい何かであったとしても、人が時間や金を使うという選択肢としては等価に存在するものは絶対にあるはずですから、そうしたものを扱う旅を想定することから、最終的にはギャップ的なものを埋めるべきコンテクストが見えてくるかと思いますし、UXデザインのアプローチをする余地は、いかようにも作り出せるものだと考えております。

 

【質問】ワークショップなど、もっと体験したいのですが、する機会に恵まれていない。

【回答】今回、ペルソナの作成にあたってインサイトマップというものを紹介しました。これは一般的にはBMC(ビジネスモデルキャンバス)の手っ取り早い作成に使われる手法ですが、プラグマティックペルソナの作成においてもなかなか使えます。このインサイトマップづくりなどは、もっとも社内で容易に実施できるワークショップの題材だと思います。社としてやりづらかったら、2~3人で、飲み会しながらでも出来ます。別に、何かに活用するアテがなくても、わいのわいの楽しみながらやることができるはずです。

CSS Niteでは規模感的に難しいようにも思いますが、小規模な勉強会とかで、ワークショップ自体はわりと実現しやすいもののひとつです(たぶん、ハッカソン系より実現しやすい。参加者を問わないため)。ぜひ、部活的にでも、機会を自ら作り出していくことをオススメいたします。

 

【質問】敷居を下げて説明するのはよいが、それを実践するときの注意点や弊害も説明すべき。

【回答】注意点としましては、基本的には適切なファシリテーターを据えましょうねというのが挙げられるかとは思います。確かにこの点は申し伝えておくべきでしたね。今後のバージョンアップにおいて含めるようにしたいと思います。

弊害のほうは、特に無いかと思います。ファシリテーター不在によるしょーもないワークショップ成果物の可能性は、弊害というよりは注意点ですし。弊害、なんだろな…。まあ、しいていえば、コンセプトデザイン等の過程において、ワークショップのことを念頭に置いてないと、思ったよりもその過程の工数がかかってるなとか、そのせいでコストがかさんでるなとか、そういうふうに見えてしまう(もしくは管理部門からそのように見られてしまう)という可能性はあるかもしれませんね。でもまあ、別に弊害ではないですね。社内コミュニケーションの問題なので。弊害、弊害か…。うーん。やったつもりになっちゃう、みたいなことはあるかもだけど、別に弊害じゃなくて、単に当事者たちの指向性がマッチしてないって話だと思いますし…(いうなればリテラシー教育の問題というか)。なのでUXデザインの導入そのものがもたらす弊害ってのは、特に無いんじゃないかなと思います。

 

【質問】プロジェクトによるとは思いますが、ペルソナ、CJM、ユーザシナリオ、それぞれ時間をどのくらいとるのかをききたいです。

【回答】はい、プロジェクトによりますね。ただし、今回申し上げた按配のとおり、関係者全員が腑に落ちさえすれば良いというのをひとまずのゴールとするならば(というか、差し当たってはその按配をオススメしますが)、それぞれ3時間程度のワークショップ1回ずつでも成立するかと思います。多少の事前準備や事後の整理があるので、稼働時間的にはもう少し必要になりますが、まあ、期間としては長くて1か月。早く済ませたかったら1週間のうちに終えることができるかと。合意がうまくとれないようであれば、ワークショップの回数を増やしてみてください。

 

【質問】ペルソナって、お金をかければかける程、精度が増すものなんですかね??? CSS Niteっぽくないセッションだった気がします。

【回答】お金をかけるという時、何にかかっているのかというと、準備のため、あるいは事後の精査のため、そういった分析のためにコストがかかるのです。数千万円という規模でペルソナを作っているグローバル企業とかの場合、たとえばワークショップひとつするにも、そのための題材をどうするか?にものすごい稼働をかけているわけです。だからコストが増えていくわけです。まっとうなペルソナ作成については、そうした文献をあたってみてください。こりゃー大変じゃ、と思うと思います。

ちなみに、別にこういうのは、ペルソナ作成に限った話ではないですよね。そもそも制作過程のありとあらゆる工程において、お金をかければかける程、精度が増すのか?という質問がそもそも成立するのか?ということとして考えてみて頂ければと思います。

CSS Niteっぽいかどうかは、ちょっとよくわからないですが、ぽくなかったようで、それは申し訳ありませんでした。ピンチヒッターでしたのでご容赦頂ければ幸いです。

 

【質問】UXDの定義が分かりやすく理解できました。どこまでやればUXDをやったことになるのかが分かると仕事でも実行に移すことができる。

【回答】分かりやすいと評価頂き、うれしく思います。今後もスライドの精度を上げバージョンアップしていくための励みとなります。ありがとうございます。

どこまでやればというのは、今回申し上げましたとおり、とりやえずやればUXDをやったことになる、というのが、少なくともイチ専門家である僕の見解ですので、僕の見解を支持して頂けるのであれば、ちょっとやってみた程度の按配でも問題ありません。とにかくやればUXDです。深津くんのセッションでも、思考のプロトタイピングを30分やるだけで違うという彼の実経験に基づいた見解が述べられていましたが、それに通ずるものがあります。気持ちレベルでの取り組みであったとしても、やるかやらないかの間には大きな隔たりがあるでしょう。

 

【質問】ペルソナ、カスタマージャーニーマップ、シナリオをやればUXDだ!というのはギモン

【回答】いえ、今回申し上げましたとおりです。少なくとも僕の見解としましては、これだけやればUXD実践の第一歩です。ただし、よりUXDを突き詰めていくとなると、その他の事柄もゆくゆくはやっていかなければならなくなるでしょう。永久にこの3つだけをやれば良いというわけではありません。第一歩であるという点を今後はもう少し強調したいと思います。ご指摘ありがとうございました。

 

・・・と、いうことで、CSS Nite LP33 Repriseのフォローアップ的な質疑応答は以上です。

最後に、今回使いましたスライドを共有しておきます(おかんUXは暫定的にVer.0.2です。前半というか前から4分の3くらいはVer.0.1とほぼ変わってません。むしろなんかフォントが変わってしまってますが……、まあこだわらないでおきます)。

なお、たぶん時間余るだろうなあと見込んでいて、あらかじめ時間調整用のスライドも用意していました。ゆくゆくはこのような内容も本編へ組み入れていこうと思っております。

 

今後ともネコメシCEOブログを宜しくお願い申し上げます。